金融機関に新規融資を申し込むと、「担保はありますか?」と聞かれます。
ここでは、あなたの会社やあなたの会社の経営者が所有するどのような資産が金融機関宛の担保にできるのかを考えてみましょう。
1.担保の種類
担保には、「物的担保」と「人的担保(=連帯保証人)」がありますが、ここでは「物的担保」について説明します。
あなたの会社やあなたの会社の経営者は、不動産・有価証券等を所有しているでしょうか?
会社では、店舗・事務所・賃貸用不動産・工場・社宅・保養所・上場株式等が該当します。
経営者では、自宅・事務所兼自宅・店舗兼住宅・別荘・上場株式・国債等が該当します。
これらの資産は、あなたの会社の資金繰りに有効活用されているでしょうか?
2.金融機関への担保差入の効果
金融機関への担保差入が可能であれば、金融機関からの新規融資は無担保の場合と比べ、審査が通りやすくなり、融資される可能性が大きく高まります。
また、無担保の場合に比べ、借入金利を低くできる可能性があります。
3.金融機関は担保をこう見ている
あなたの会社が業績好調を維持していれば、金融機関は担保を「万が一の場合」と捉えていますが、業績が芳しくない場合は、担保を非常に重要視します。
ある金融機関では「担保があるから」と、業況・業績が多少悪くても融資審査を承認する場合もあります。
それほど、金融機関にとって担保が持つ効果は大きいのです。
4.担保となりそうな資産を持っているが、どうすればよいのか?
融資を希望する金融機関に相談して、該当する資産を担保として受入可能か否かを判断してもらうことになりますが、まずは金融機関が受入可能な担保か否かをあなた自身で考えてみましょう。
担保の種類別に説明します。
①不動産
あなたの会社が自己所有している店舗・事務所・賃貸用不動産・工場・社宅・保養所、あなたの会社の経営者が自己所有している自宅・事務所兼自宅・店舗兼住宅・別荘等です。
店舗・事務所は一戸建てであったり、マンションの一室である場合もあるでしょうが、いずれも担保差入可能です。
経営者の自宅の場合は住宅ローンの担保として既に金融機関から抵当権が設定されている場合がありますが、それでも担保として差入を希望する金融機関は多いです。
担保の価値は「万が一の場合」に売却が容易か否かによります。
例えば、都内の人気地域にある住宅やマンションは売却が容易であり、担保価値も高い傾向にあります。
一方で、不人気地域や郊外にある空室が目立つマンションや別荘・リゾートマンションは売却が容易でないため、担保価値は低くなります。
また、賃貸用不動産(賃貸用アパートやマンションを所有している・賃貸用店舗やビル等を所有している)は家賃が周辺家賃相場と乖離していないか、空室率が高くないか、等で担保価値が変わってきますが、金融機関が担保として差入を望む場合が多いです。
建物の築年数や構造も担保価値に大きく影響を与えますが、担保価値の算定方法についてはこの項とは別に説明したいと思います。
②有価証券
国債や上場している株式が該当します。
上場していない会社やあなたの会社の子会社、友人・親族等の会社の株式は担保にならない場合がほとんどです。
上場株式であっても、東証一部・二部上場株式ではない新興市場であるJASDAQ・マザーズ、また、地方市場(名古屋・札幌・福岡の各証券取引所)の上場株式は、担保として受入ができない金融機関があります。
③その他の担保
・ゴルフ会員権やリゾート会員権
昭和バブルの時代には、担保として受け入れている金融機関が多数ありましたが、現在は極少数派です。
理由は「万が一の場合」に現在は売却が容易でないからです。
・入居保証金
あなたの会社が事務所等を賃借している場合、入居保証金を差し入れている場合が多いと思います。
しかしながら、賃貸契約においては入居保証金の担保差入禁止条項があるのが現在で は一般的であり、担保差入の対象とならない場合がほとんどです。
・売掛金
このホームページで指す金融機関(銀行・信用金庫等)では、あまり一般的に取り扱っていません。ただし、信用保証協会の流動資産担保融資保証制度等で売掛金担保を積極的に受入れている金融機関もありますので、融資を希望する金融機関に相談してみるとよいでしょう。
また、主にノンバンクが事業としているファクタリングは売掛債権譲渡であり、担保差入とは異なるものとなります。
ノンバンクの金利・手数料は銀行・信用金庫等の金利・手数料に比べ高いこともあり、あなたの会社の資金繰りが緊急を要する場合を除いて、資金調達の方法として考えるのは劣後させてよいでしょう。
5.終わりに
新規融資を受けるために担保を差入れることは、あなたの会社に非常に有利に働きますが、何よりもあなたの会社の業況・業績を向上させ、維持していくことが一番重要です。
金融機関は「担保は副次的なもの。何より重要なのは業況・業績」と考えています。
担保に左右されない新規融資がいつでも受けられるようになることが、あなたの会社が目指すゴールです。